ベンチャー企業への就職や転職を考えるとき、「実際に働くとどうなんだろう」と気になる人は多いと思います。
ベンチャー企業といっても、会社の規模や事業、働き方は一社ずつ違います。この記事では、ベンチャー企業とは何かを整理したうえで、働くメリット・デメリット、新卒で入る場合の考え方、給料の決まり方、入社前に確認したいことを順にまとめます。
ベンチャー企業とは?スタートアップとの違い
ベンチャー企業には明確な定義がない
ベンチャー(venture)は英語で「冒険的な事業」という意味で、「ベンチャー企業」は日本で使われている言葉です。一般に、新しい事業やサービスで成長を目指す、比較的若い会社を指して使われます。
ただし、法律などで決まった定義はありません。どんな会社をベンチャー企業と呼ぶかは、使う人や場面によって少しずつ違います。
スタートアップとの違い
スタートアップも、法律で決まった定義のある言葉ではありません。一般には、新しいビジネスモデルで、短い期間に大きく成長することを目指す会社を指すことが多い言葉です。外部の投資家から資金を集めて事業を広げていく会社もよく含まれます。
ベンチャー企業とスタートアップは重なる部分が大きく、ほぼ同じ意味で使われることもあれば、「スタートアップはベンチャー企業の中でも特に急成長を目指す会社」と区別して使われることもあります。言葉の違いより、その会社がどんな事業で、どのくらいの速さで成長しようとしているのかを見るほうが、働く場所を考えるうえでは役に立ちます。
中小企業・大手企業との違い
中小企業は、中小企業基本法で、業種ごとに資本金の額や従業員数によって範囲が決められています。一方、ベンチャー企業は規模ではなく「新しい事業で成長を目指しているか」という性質で呼ばれる言葉なので、中小企業に当てはまるベンチャー企業もあれば、当てはまらないベンチャー企業もあります。
大きく成長して大手企業と同じくらいの規模になった会社を、「メガベンチャー」と呼ぶこともあります。
ベンチャー企業で働くメリット
よく挙げられるメリットを、7つにまとめました。どれも「ベンチャー企業なら必ずそうなる」というものではなく、そうなりやすい傾向として読んでください。
若いうちから幅広い仕事に関われる
少人数で事業を動かしている会社では、一人が担当する範囲が広くなりやすく、職種の枠を越えてさまざまな仕事に関わる機会があります。新しい分野に触れることも多いので、好奇心が強い人には面白い環境です。
任される範囲が広がりやすい
社員一人ひとりが事業の大事な担い手なので、経験年数にかかわらず、できることに応じて仕事を任されることがあります。新卒を採用し、早い段階から役割を持ってもらいながら育てている会社もあります。
意思決定が早く、提案が形になりやすい
組織が小さいと、提案してから決まるまでの距離が短くなります。自分のアイデアを社内で説明し、実際に試してみる機会も多く、考えを人に伝える力が鍛えられます。
経営者との距離が近く、経営を間近で見られる
経営者と同じ場で働くことが多く、会社がどう判断し、どう動いているのかを近くで見られます。将来、起業や独立を考えている人にとっては学びの多い環境です。
会社の成長を一緒に経験できる
事業が伸びていく過程、仕組みができあがっていく過程に、当事者として関われます。新しい技術やサービスに取り組んでいる会社も多く、ゼロから形にしていく経験は、その後のキャリアでも生きてきます。
評価や給与の仕組みが柔軟な会社もある
年次より役割や成果を重視して給与を決める会社や、ストックオプションなどの制度を設けている会社もあります。ただし、仕組みは会社によって大きく違うので、後で紹介する「給料はどう決まる?」もあわせて読んでください。
働き方の選択肢がある会社もある
リモートワークや時間の融通など、柔軟な働き方を取り入れている会社もあります。いろいろな経歴を持つ人と一緒に働けることも、ベンチャー企業でよく挙げられる魅力です。
ベンチャー企業で働くデメリット
メリットの裏返しとして、気をつけたい点もあります。デメリットがあるから避けるというより、「自分にとって大丈夫か」「その会社ではどうなっているか」を確かめるための項目として見てください。
経営が安定するまでに時間がかかることがある
新しい事業は、収益が安定するまでに時間がかかることがあります。事業の方向転換や、資金の状況によって計画が変わる可能性もあります。
給与や福利厚生の制度が整っている途中のことがある
創業から間もない会社では、退職金や各種手当などの制度がまだ整っていないことがあります。制度の有無は会社によって違うので、入社前に確認しておくと安心です。
役割や組織の体制が変わりやすい
成長に合わせて、担当する仕事や組織の形が変わることがあります。業務の分担が細かく決まっていないことも多く、変化を楽しめる人には向いていますが、落ち着いて一つのことに取り組みたい人には負担に感じられるかもしれません。
教わる仕組みが会社によって大きく違う
研修やマニュアルが整っている会社もあれば、仕事をしながら先輩に聞いて覚えていく会社もあります。わからないことを誰に相談できるのか、どう育ててもらえるのかは、会社ごとに確かめたいポイントです。
忙しい時期に仕事が集中することがある
少人数の会社では、繁忙期や立ち上げの時期に、一人ひとりの仕事量が増えることがあります。労働時間がきちんと管理されているか、時間外に働いた分がどう扱われるかは、規模にかかわらず入社前に確認しておきたい点です。
専門性の積み方を自分で考える必要がある
幅広い仕事に関われる一方で、一つの分野を深める機会は自分で意識してつくる必要があります。どんな経験を積みたいのかを、上司や周りの人と話しながら考えていけると安心です。
新卒でベンチャー企業ってアリ?
結論から言うと、新卒でベンチャー企業に入るのは十分にアリです。ただし、「ベンチャー企業だから」ではなく、「その会社で、自分がどう働き、どう育っていけるか」で判断することが大切です。
新卒で入るときによくある誤解
- 「給与が高い」:初任給を高めに設定している会社もあれば、そうでない会社もあります。ベンチャー企業全体としてどちらとは言えません
- 「1年目から大きな裁量がある」:早くから任せる会社もありますが、任される範囲や、それを支える仕組みは会社によって違います
- 「入れば必ず成長できる」:成長しやすいかどうかは、任せ方と、振り返りや相談の機会があるかどうかで変わります
新卒でベンチャー企業を選ぶときに見たいこと
新卒で入る場合、仕事のやり方を初めて身につける場所になります。仕事の中身や給与だけでなく、
- 入社後、最初にどんな仕事から始めるのか
- 誰に教わり、誰に相談できるのか
- 仕事の振り返りやフィードバックの機会があるか
を聞いてみてください。新卒を定期的に採用している会社なら、先輩社員の話を聞かせてもらえることもあります。
ベンチャー企業・スタートアップの年収や給料はどう決まる?
「ベンチャー企業の平均年収」は一言では言えない
ベンチャー企業には明確な定義がないため、「ベンチャー企業の平均年収」として比べられる決まった数字はありません。創業間もない会社から、大手企業と同じくらいの規模になった会社までが同じ言葉で呼ばれているので、年収の幅もとても広くなります。インターネット上の年収ランキングを見るときは、いつの、どの会社の、何の数字なのかを確かめてください。
給料を左右する主なもの
ベンチャー企業やスタートアップの給料は、主に次のようなことで変わります。
- 会社の事業の段階や、資金の状況
- 職種や、求められる専門性
- 評価や昇給の仕組み(年次を重視するか、役割や成果を重視するか)
- 入社時の経験やスキル
新卒の初任給も、会社によって考え方が違います。金額だけでなく、その後どう上がっていくのかをあわせて確認することが大切です。
ストックオプションとは
ストックオプションは、あらかじめ決められた価格で自社の株式を買える権利のことです。株式の価値が上がれば利益になりますが、上場していない会社の株式は売れる機会が限られ、価値が上がらないこともあります。「将来の資産になるかもしれないもの」として、給与とは分けて考えるのが安心です。
給料について確認したいこと
- 月給の内訳(基本給、手当、固定残業代が含まれているか。含まれている場合は何時間分か)
- 賞与(ボーナス)の有無と、決まり方
- 昇給の時期と、評価の仕組み
- 退職金制度の有無
ベンチャー企業のあるある
ベンチャー企業で働いたことのある人がよく話す「あるある」を、いくつか紹介します。どれも会社によって違うので、雰囲気をつかむ参考にしてください。
- 一人でいくつもの役割を持つ:本来の担当に加えて、採用や社内の仕組みづくりなどに関わることがあります
- 仕組みやルールを自分たちでつくる:決まった手順がない仕事は、話し合いながら決めていきます
- 新しい事業やサービスの話がよく出る:成長のために、新しい挑戦を検討する機会が多い傾向があります
- 経営者に直接相談する機会がある:組織が小さい分、経営者と話す距離が近くなります
- 服装やオフィスの雰囲気が自由なことが多い:会社の文化によってさまざまです
- 組織が変わるスピードが速い:人が増えたり、チームの形が変わったりすることがよくあります
会社によって違うので確認したいこと
ここまで見てきたように、ベンチャー企業の働き方は会社ごとに大きく違います。入社を考えるときは、次のことを確かめておくと安心です。
事業の中身と、これまでの歩み
どんな事業で、何が収益の柱になっているのか。これまでどう成長してきて、これから何をしようとしているのか。会社のホームページや発信している情報、面接の場で確認しましょう。
給与と労働条件
給与の内訳、労働時間、時間外に働いた分の扱い、休日などの労働条件は、入社前に書面で確認できます。わからない点は、遠慮せずに質問してください。
育成と相談の仕組み
研修やフィードバックの機会があるか、困ったときに相談できる人がいるかは、特に新卒で入る場合に大切なポイントです。
実際に働いている人の声
ホームページや口コミの情報だけでは、わからないこともあります。会社説明会や面談で社員の話を聞いたり、インターンやアルバイトとして実際に働いてみたりすると、入社後に「思っていたのと違った」と感じることを減らせます。
ベンチャー企業に向いている人の特徴とは?
向いている・向いていないは、能力の良し悪しではなく、合う環境の違いです。次のような人は、ベンチャー企業の環境を楽しみやすいでしょう。
変化を楽しめる
仕事の内容や組織の形が変わっていくことを、面白いと感じられる人です。決まった手順がないときに、周りと相談しながら進め方を考えられると、働きやすくなります。
自分から動ける
「こうしたらいいのでは」と思ったことを、自分から提案したり、試したりできる人です。最初からできる必要はなく、学生時代のアルバイトやサークル、学業などで、自分で考えて動いた経験があれば十分な土台になります。
挑戦したい分野がはっきりしている
取り組みたい事業や技術、将来の独立など、やりたいことがある人は、ベンチャー企業での経験を自分の目標につなげやすくなります。
まとめ
- ベンチャー企業には明確な定義がなく、規模も働き方も会社ごとに違う
- 幅広い仕事に関われる、任される範囲が広がりやすいなどのメリットがある一方、制度や体制が整っている途中のこともある
- 新卒で入るのも十分にアリ。育成や相談の仕組みがあるかを確かめる
- 給料は会社の段階や職種、評価の仕組みで変わる。金額だけでなく内訳と上がり方を確認する
メリットとデメリットの両方を知ったうえで、自分に合う会社かどうかを、実際に話を聞きながら確かめてみてください。



